メクラ柳と眠る女1

メクラ柳と眠る女1

2018-07-25    04'13''

主播: Michael_Moon1984

329 1

介绍:
目を閉じると,風の匂いがした。果実のようなふくらみを持った5月の風だ。そこにはざらりとした果皮があり、果肉のぬめりがあり、種子の粒だちがあった。果肉が空中で砕けると、種子は柔らかな散弾となって、僕の裸の腕にのめり込んだ。微かな痛みだけがあとに残った。 「ねえ、今何時?」、いとこが僕に尋ねた。20センチ近く身長差があったので、いとこがいつも僕の顔を見上げるようにしてしゃべった。 僕は腕時計を見た。「10時20分」 「時計はあってる?」といとこが尋ねた。 「あってると思う」いとこは僕の手首をひっばって時計を見た。指は細くすべすべとしていたが、見かけより力は強かった。「ねえ、これが高いの?」 「高くは無い。安物だよ」時刻表にもう一度目をやりながら僕は言った。 反応はない。 いとこの方を見ると、彼は困ったような顔つきで僕を見上げていた。唇のあいだからのぞいた白い歯が、退行した骨のような見える。 「安物だよ」と僕はいとこの顔を見ながら、言葉を正確に区切ってで繰り返した。「安物だけど、けっこう正確なんだ」 いとこは黙ってうなずいた。 只要阖上眼睛,就能闻到风的味道。带有果实般膨胀感的,五月的风。风里,有熟到裂开的果皮,有果肉的黏黏的汁液,还有籽的微小颗粒。果肉在空中碎裂开来,籽就变成了柔软的霰弹般,钻入我露在外面的胳膊,只留下轻微的、疼痛的痕迹。 “哎、现在是几点?”堂弟问我。我们有着近二十公分的身高差,是以堂弟总是要仰着脑袋看着我的脸说话。 我看了一下手表:“十点二十分。” “是准的吗?”堂弟问。 “我想应该准的。” 堂弟将我的手腕捉过来,看着表。没想到这细长滑溜的手指,却比看起来要有力。“这表很贵吗?” “并不贵呢,便宜货来的。”我扭头又看了一眼站牌,轻轻说道。 没有回应。 于是我朝着堂弟那边看去,他正在疑惑般地仰着脑袋看着我,口缝中透出白白的牙齿,看起来好像衰颓了的骨头。 “是便宜货哟。”我一边看着堂弟的脸,一边仔细地重复着正确的语言,“便宜货是没错啦,可是时间还蛮准确呐。” 堂弟没说话,默默地点了点头。
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