2.夏目漱石<<夢十夜>>の《第十夜》

2.夏目漱石<<夢十夜>>の《第十夜》

2016-08-04    11'53''

主播: 萬屋*蓮*

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介绍:
日语著名文学分享之第二回-----夏目漱石<<夢十夜>>の《第十夜》朗読劇。因版权限制,需要此朗读原文的朋友们可以在日本青空文库里搜索该作家的作品,即可找到。可以边对着原文边听哦。 欢迎各位收听并提出宝贵的意见建议。感谢大家的支持。 以下是提供的部分原文: 夢十夜 作家名:夏目漱石 第十夜 庄太郎が女に攫さらわれてから七日目の晩にふらりと帰って来て、急に熱が出てどっと、床に就ついていると云って健けんさんが知らせに来た。  庄太郎は町内一の好男子こうだんしで、至極しごく善良な正直者である。ただ一つの道楽がある。パナマの帽子を被かぶって、夕方になると水菓子屋みずがしやの店先へ腰をかけて、往来おうらいの女の顔を眺めている。そうしてしきりに感心している。そのほかにはこれと云うほどの特色もない。  あまり女が通らない時は、往来を見ないで水菓子を見ている。水菓子にはいろいろある。水蜜桃すいみつとうや、林檎りんごや、枇杷びわや、バナナを綺麗きれいに籠かごに盛って、すぐ見舞物みやげものに持って行けるように二列に並べてある。庄太郎はこの籠を見ては綺麗きれいだと云っている。商売をするなら水菓子屋に限ると云っている。そのくせ自分はパナマの帽子を被ってぶらぶら遊んでいる。  この色がいいと云って、夏蜜柑なつみかんなどを品評する事もある。けれども、かつて銭ぜにを出して水菓子を買った事がない。ただでは無論食わない。色ばかり賞ほめている。  ある夕方一人の女が、不意に店先に立った。身分のある人と見えて立派な服装をしている。その着物の色がひどく庄太郎の気に入った。その上庄太郎は大変女の顔に感心してしまった。そこで大事なパナマの帽子を脱とって丁寧ていねいに挨拶あいさつをしたら、女は籠詰かごづめの一番大きいのを指さして、これを下さいと云うんで、庄太郎はすぐその籠を取って渡した。すると女はそれをちょっと提さげて見て、大変重い事と云った。  庄太郎は元来閑人ひまじんの上に、すこぶる気作きさくな男だから、ではお宅まで持って参りましょうと云って、女といっしょに水菓子屋を出た。それぎり帰って来なかった。  いかな庄太郎でも、あんまり呑気のんき過ぎる。只事ただごとじゃ無かろうと云って、親類や友達が騒ぎ出していると、七日目の晩になって、ふらりと帰って来た。そこで大勢寄ってたかって、庄さんどこへ行っていたんだいと聞くと、庄太郎は電車へ乗って山へ行ったんだと答えた。  何でもよほど長い電車に違いない。庄太郎の云うところによると、電車を下りるとすぐと原へ出たそうである。非常に広い原で、どこを見廻しても青い草ばかり生はえていた。女といっしょに草の上を歩いて行くと、急に絶壁きりぎしの天辺てっぺんへ出た。その時女が庄太郎に、ここから飛び込んで御覧なさいと云った。底を覗のぞいて見ると、切岸きりぎしは見えるが底は見えない。庄太郎はまたパナマの帽子を脱いで再三辞退した。すると女が、もし思い切って飛び込まなければ、豚ぶたに舐なめられますが好うござんすかと聞いた。庄太郎は豚と雲右衛門が大嫌だいきらいだった。けれども命には易かえられないと思って、やっぱり飛び込むのを見合せていた。ところへ豚が一匹鼻を鳴らして来た。庄太郎は仕方なしに、持っていた細い檳榔樹びんろうじゅの洋杖ステッキで、豚の鼻頭はなづらを打ぶった。豚はぐうと云いながら、ころりと引ひっ繰くり返かえって、絶壁の下へ落ちて行った。庄太郎はほっと一ひと息接いきついでいるとまた一匹の豚が大きな鼻を庄太郎に擦すりつけに来た。庄太郎はやむをえずまた洋杖を振り上げた。豚はぐうと鳴いてまた真逆様まっさかさまに穴の底へ転ころげ込んだ。するとまた一匹あらわれた。この時庄太郎はふと気がついて、向うを見ると、遥はるかの青草原の尽きる辺あたりから幾万匹か数え切れぬ豚が、群むれをなして一直線に、この絶壁の上に立っている庄太郎を目懸めがけて鼻を鳴らしてくる…… ……