いま、会いにゆきます《5》

いま、会いにゆきます《5》

2016-02-26    03'38''

主播: 日语小说和中文小爱情

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介绍:
澪が死んだとき、もともと弱虫だったぼくは、とことん弱虫になり、息をする力さえも失いかけていた。 ずいぶんと長い間、仕事をほったらかしにして事務所にすごく迷惑をかけて。それでも所長は代わりの人間を探したりせず、ぼくが立ち直るのを待っていてくれる。それにいまでも、ぼくは4時には仕事を終えて帰宅できるようにしてもらっている。学校から帰った祐司をなるべく一人きりにしてくないというぼくの願いを聞き入れてもらっているのだ。その分、給料は少なくなったが、お金には代えられない貴重な時間を得ることが出来た。 よその町には学童保育という制度があるとも聞いたけれど、ここにはそんな気の利いたシストムは存在しない。 だから、とてもありがたく思っている。 事務所に到着すると、ぼくは先に出勤している長瀬さん挨拶をした。 おはようございます! 彼女も挨拶を返してくれる。 おはようございます! ぼくがこの事務所に入り入所したとき、既に彼女はいた。高校を卒業してすぐに来たのだと言ったから、いまはもう26歳にはなっているはずだ。 控えめで生真面目な性格の女性で、その内面に似つかわしいおとなしそうな挨拶顔立ちをしている。自己主張が得意な女の子たちの中で、彼女が立っていられる場所はちゃんとあるのだろうかと、ときどき心配したりもする。肘で押され、足で小突かれしているうちに、いつか世界のヘリから落っこちてしまうんじゃないだろうか?そんなふうにも思う。 所長はまだいない。 最近、とみに事務所に出てくる時間が遅くなっている。歩く速度が遅くなったこととは関係がないと思うけれど。 だから、しばらくのあいだ、事務所には二人だけしかいない。これで全て。仕事の量から言っても、妥当な人数だと思う。