介绍:
あれはとおいい処(ところ)にあるのだけれど おれは此処(ここ)で待っていなくてはならない 此処は空気もかすかで蒼(あお)く 葱(ねぎ)の根のように仄(ほの)かに淡(あわ)い 決して急いではならない 此処で十分待っていなければならない 処女(むすめ)の眼(め)のように遥(はる)かを見遣(みや)ってはならない たしかに此処で待っていればよい それにしてもあれはとおいい彼方(かなた)で夕陽にけぶっていた 号笛(フィトル)の音(ね)のように太くて繊弱(せんじゃく)だった けれどもその方へ駆け出してはならない たしかに此処で待っていなければならない そうすればそのうち喘(あえ)ぎも平静に復し たしかにあすこまでゆけるに違いない しかしあれは煙突の煙のように とおくとおく いつまでも茜(あかね)の空にたなびいていた
上一期: 雨の日
下一期: 夏の日の歌