夏と私
真ッ白い嘆(なげ)かいのうちに、
海を見たり。鴎(かもめ)を見たり。
高きより、風のただ中に、
思い出の破片の翻転(ほんてん)するをみたり。
夏としなれば、高山に、
真ッ白い嘆(なげ)きを見たり。
燃ゆる山路(やまじ)を、登りゆきて
頂上の風に吹かれたり。
風に吹かれつ、わが来(こ)し方(かた)に
茫然(ぼうぜん)としぬ、………涙しぬ。
はてしなき、そが心
母にも、……もとより友にも明(あか)さざりき。
しかすがにのぞみのみにて、
拱(こまぬ)きて、そがのぞみに圧倒さるる。
わが身を見たり、夏としなれば、
そのようなわが身を見たり。