吾輩は猫である19

吾輩は猫である19

2021-10-06    02'45''

主播: 丹青猫

235 0

介绍:
おりから門の格子チリん、チリン、チリリリリンと鳴る。大方来客であろう、来客なら下女が取次に出る。魚屋の梅公がくる時の外はでないことに極めているのだから、平気で、もとのごとく主人の膝に座って酔った。すると主人は高利貸にでも飛び込まれたように不安な顔つきをして玄関の方を見る。何でも年賀の客を受けて酒の相手をするのかいやらしい。人間もこのくらい偏屈になれば申し分はない。そんなら早くから外出でもすれば良いのにそれほどの勇気もない。いよいよ牡蛎の根性を表している。しばらくすると下女が来て寒月さんがおいでになりましたと言う。この寒月と言う男はやはり主人の旧門下てあったそうだが、今では学校を卒業して、なんでも主人より立派になっていると言う話である。この男がどういうわけか、よく主人の所へ遊びに来る。来ると自分を思っている女がありそうな、なさそうな、世の中が面白そうな、つまらなそうな、すごいような艶ぽいような文句ばかり並べては帰る。主人のようなしなびかけた人間を求めて、わざわざこんな話をしに来るのからして合点が行かぬが、あの牡蛎的主人がそんな談話を聞いて時々相槌を打つのはなお面白い。