日影《春待つ僕ら》ーー《春待つ季節》

まだ冷たい地面をゆっくりと温めるように いつも春は訪れる 様々な別れや出会いがあり 新たなスタートを切る季節 そんな春が私は大っ嫌いだ 毎年咲く桜の花を見る度に それまでの失敗や後悔をリセットし 新しい自分になれるのだと信じていた しかし、巡りゆく春が 私を変えてくれることはなかった 心の中に渦巻く（うずまく）幾つもの感情 その思いを表に出すことができずに 私の心の地面は冷たい冬のままだった でも、今年の春は違った 暖かな風が　眩しい光が　 私の凍りついた心を溶かしてくれたのだ 今をどう生きるかで未来はもちろん 傷ついた過去さえも支えることが できることを教えてくれた 私の心は固く冷たく 通り過ぎる季節に立ちすくむだけで 向き合うことから逃げてきた 今年の春が来るまで私は 自分にとって大事なものが見つからないことを言い訳に 自分の殻に閉じこもり 見ようとしていなかったのだ 殻の向こうで同じように迷い 悩む人たちがいることを 春の暖かな風が教えてくれた ぶつかり合い、傷つくことで 人は分かり合えるということを 春の眩しい光が教えてくれた 輝きに満ちた日向があるのは 苦悩する日陰があるからだと 春を待ち望んだ草花が 冷たい地面から 芽吹くように 私はようやく気がついた この世界に強い人なんていない 誰もが弱さや不安を抱えながら それでも誰かと同じ目線でいたいと願い 背伸びをして生きている いつか、その背伸びが本当の強さになることを信じて だから、私は前に進む 大事なものがある場所にたどり着くために そう気づかせてくれた人たちのために 今という一瞬一瞬をひたむきに 正解なんてないかもしれない 勝っても負けてもみんなの思いが一つになる時 人は勇気を持って その一歩を踏み出せるのだ 一歩ずつ確実に 時には止まりながらでも 振り返ってしまってもいい 不安を分かち合い 脆さを支え合えるみんなと歩みたい 大事なものを見つけ出すまで 私たちは精一杯春待つ季節を生きていく