中国の民族楽団

中国の民族楽団

2018-04-02    09'50''

主播: zhudanyang88

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介绍:
毎週お届けしているチャイナビジョン2018、今回は中国の民族楽団についてご紹介していきます。  お相手は私、朱丹陽です。 中国には「民族楽団」と呼ばれる楽団があり、国内外で約30の団体が活躍しています。その特徴は、中国の伝統楽器を用い、オーケストラの編成で演奏を行う点にあります。こうした形式の演奏は、海外でも公演が行われ、多くのファンに親しまれています。  中国の民族楽団は、管弦楽器をメインとした楽団で、日本でも愛されている胡弓(二胡)や笛、琴、琵琶、中国太鼓など、凡そ20種類の楽器で演奏されます。これらの楽器には、昔から伝わるものもあれば、少数民族のものもあります。 たとえば、皆さんもよくご存じの笛は指揮者の向かって左側に三人が並んで演奏します。この笛は中国の最も古い楽器で、少なくとも8000年の歴史を持っているとされています。笛の名曲は東西南北様々な地域に存在するうえ、多くの少数民族の文化の中にも見られ、歴史的、地理的ともに幅広く存在しています。 この笛に似た形状をもつ楽器に萧があります。竹かんむりに自粛の粛と書く、なかなかお目にかかれない楽器で、笛の吹き手が入れ替わりに演奏します。音色は笛より柔らかく、上品なことで広く愛されています。 指揮者の正面の後側には、竹冠に生の字を書く笙が二つ並びます。女神によってつくられたという伝説がる楽器です。黄色い土で人形を作り、それに息を吹き込んで人類を作ったとされる女帝・女媧が、農作業だけに没頭している人々を見て、何か楽しませるものがないかと考えるうちに、数本の竹でできたこの楽器を作り出したと言われます。また、このXIAOは凡そ2200年前の秦の時代まで、貴重なお客さんを迎える楽器として大事にされ、貴族の人々の間で愛用されていました。 今お聞きの曲は、「阿细跳月」で、「月光に踊るアーシー人」です。笛やSHENG笙をメインにした作品で、南にある雲南省で暮らしている少数民族、イ族のアーシー人がダンスに用いる作品です。イ族の暮らす地区では、真夏の夜、翌年の豊作を祝う祭りの日には、夕方から、人々が松明を持って広場に集まります。そこで、未婚の若い男女が晴れ着を身にまとい、たき火を囲んで思う存分踊ります。軽快なメロディーから、ユニークな民族色あふれる祭りの光景が浮かぶこの曲は、中国の名曲に選ばれています。 さて、今流れている曲は琵琶の演奏によるものです。指揮者の正面、舞台の中心部に6人並び、演奏されます。琵琶もまた秦の時代に現れ、凡そ2000年も受け継がれている楽器の一つです。敦煌壁画でよく見かけられる楽器で、壁画の中には琵琶を両手で頭の後部に高く上げて引きながら舞い降りる天空に住む人の姿が描かれています。琵琶は、独奏のほか、伴奏、重奏、合奏などの形をとることができるので、中国では「弦楽器の王者」と讃えられています。 清の時代の琵琶演奏の名人、鞠士林氏は蘇州城に向かいますが、到着が遅れ、城門が閉まってしまいます。鞠氏は仕方なく城門の近くに腰を下ろし、琵琶でお得意の曲を弾き、翌朝の開城を待つことになります。弾いた曲は夕日をテーマにした曲。すると、そのあまりにも美しいメロディーに魅かれた兵士が、しばらくして城門を開け、城の中に彼を招き入れます。この物語が生まれて以来、この曲は「城門を開ける曲」として知られるようになりました。 一方、その古風で優雅で安らかな雰囲気と、清らかに響く音色は、唐の時代の詩人張若虚の「春江花月夜」と重ねられるようになります。春、河川、花、月、夜の詩的な美しさを謳いあげ、唐の漢詩の中でも最高のものと讃えられるこの詩の名前が、いつしか清の時代の琵琶の作品に与えられるという奇跡の出会い。まさに千年越しの運命の出会いと言えるでしょう。この「春江花月夜」もまた、中国民族音楽のトップテンに数えられる名曲です 琵琶の後ろに一列に並ぶのが、阮です。耳偏に元来のガンの字を書きます。梨の形に似た共鳴部を持つ琵琶とは異なり、丸い共鳴部を持っています。実は、この楽器の名前はある人物の名字からつけられています。凡そ800年前の魏晋の時代、政治環境が乱れ、民衆は暮らしに苦しんでいました。これに失望した一部の高官が現実から逃避し、山にこもって隠遁生活を送るようになりました。その代表として歴史に残っているのが、有名な竹林の七賢です。この7人のうちの一人阮咸は琵琶に似た楽器が得意でしたが、その没後、その楽器はともに葬られてしまったことから、一度この楽器はこの世から姿を消すことになります。ですが、後の唐の時代になって発掘され、再現されることになります。そして、その名称として、その個性に満ち、自由奔放に生きた持ち主を偲ぶために、当時阮咸と呼ばれ、後に名字「阮」だけが残るようになりました。 この高く響きわたる楽器は、日本ではチャルメラとも呼ばれる唢呐です。こちらも、舞台の中央部の後側にあります。SUONAは古代ペルシア語からきた発音で、ペルシアやアラブ一帯に流行っていたと言われます。凡そ700年前の金、元の時代に伝わってきました。今では中国の西北部などで冠婚葬祭や、年配者の誕生日祝いの宴会、新生児の満月祝い、新築の棟上げなど、おめでたい行事には欠かせない身近な存在です。 中国の民族楽団は、1953年、中国ラジオ民族楽団の成立によって正式に発足しました。その後、中央民族楽団、上海民族楽団、広東オペラ劇場民族楽団などが相次いで立ち上げられました。1960年代の後半からは、香港、台湾のほか華人華僑が集まり住む海外でも広がりました。 今日も、中国ラジオ民族楽団をはじめとする民族楽団は、時代の波の中でもなお新しいチャレンジを続けます。最近ではデジタル技術を生かし、曲の内容に合わせた映像を取り入れるなどの試みを行っています。音楽と映像の融合する舞台は、人々の想像を掻き立て、その場にいる全ての人を独特の世界に引き込む力に満ちています。 チャイナビジョン2018、今回は中国の民族楽団の現状についてお伝えしました。お相手は私、朱丹陽でした。