瀬田と飲むのが阿佐ヶ谷(あさがや)なのは、瀬田が東中野に住んでいるから、三鷹(みたか)に住んでいる私との、なんとなく中間をとってのことだった。瀬田の職業も時間が決まっていないし、私も夕方の出勤だから、大体飲むときは、深夜から、朝までになるのが普通だった。
「夏目の絵も俺好きやけど、こいつの絵も、ほんまに、ええねん。」
私が描いている絵を、瀬田はなぜか好きでいてくれる。
いつも黒か白、シンプルで、でもセンスの良い服を着ている瀬田が、派手な色使いで、泥臭(どろくさ)い私の油絵(あぶらえ)を、どうして好むのか分からないが、友人に薦め、何枚か買わせてくれたことまであるのだ。もちろん嬉しいのだが、なんとなく、面映(おもはゆ)いというか、どうして私の絵を、と、謙遜する気持ちの方が先に立ってしまって、これではあかんな、と思う。