積極的な自己否定のやり方は、ごくごくシンプル。
まずは「もっといい自分」になれるように、前向きに「今の自分らしさ」を否定する。
次は「新しい自分の理想のかたち」を思い描く。
そして積極的に、そこに近づく努力をするのです。
積極的な自己否定の三つのプロセスで、いちばん難しいのは前向きに「今の自分らしさ」を否定することです。
人は誰でも自分が可愛いし、今まで積み重ねてきた経験、そこから得たスキルはよりどころとなっていて、なかなか否定しづらいものです。しかし、経験というのは過去の自分の意思決定によってできあがったもので、自分自身ではありません。
たとえば、「西に旅するか、東に旅するか」という選択に直面した時、西を選べば「西の旅」という経験をしますが、仮に東を選んだとしても、自分が消滅してしまうわけではありません。「東の旅」という経験をもつ自分になるだけです。つまり、今までの経験やスキルをいったん手放したとしても、自分の意思や志や精神は決して損なわれません。
また、単なる自己否定と自分を矯正するための自己否定の違いも知っておきましょう。単なる自己否定は「自分はすべてだめだ、何の価値もない」と人格を含めた全否定となり、自分で自分を追い詰めてしまいます。
野球のたとえで言えば、「もうお前は打てない。金輪際(こんりんざい)やめてしまえ」と自分を責めて、叩きつぶしてしまうのが単なる自己否定。
「今のままのお前では打てない。だから、打てるように今のフォームを変えていこう」と自分の現状をありのままに把握し、改善するのが前向きな自己否定です。
前向きな自己否定をするとは、自分の選択を常に疑い、ちょっとでもおかしなところがあれば、もう一度選択しなおすことでもあります。
「このやり方のほうがいい」と矯正してフォームを変えても、やっぱりうまくいかないこともままあり、そうしたらまた「では、こっちのやり方にしよう」と矯正していきましょう。
僕は前向きな自己否定を続けているので、いつもトライ&エラーです。人より失敗の数は多いけれど、それだけトライしている証拠なので、構わないと思っています。
また、常に細かく矯正していると、ダメージの小さなエラーですみます。さらに、トライすればたとえエラーになっても自分だけのオリジナルの情報が収集できるので、決して無駄にはなりません。
積極的な自己否定がうまくなると、いつでも自分をリセットでき、ゼロからスタートできる。そう信じて、繰り返し矯正しているつもりです。