売りたい気持ちと買いたい気持ちをつなぐ技術

売りたい気持ちと買いたい気持ちをつなぐ技術

2016-01-24    12'24''

主播: 索谓

1970 247

介绍:
◆著者プロフィール 西原健太さん、1982年滋賀県大津市生まれ。「本のがんこ堂」唐崎店店長。  2007年の「角川文庫の夏フェア」ディスプレイ部門「グランプリ」を受賞し、2008年には「金賞」、2009年に再び「グランプリ」2010年に「金賞」を受賞しています。また、その他にも数々の装飾コンテンストで輝かしい成績をおさめています。最近では新聞やテレビなどで紹介される機会も多くなっていまして、今まさにメディアで話題の書店員さんです! こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。 今回ご紹介するのは「売りたい気持ちと買いたい気持ちをつなぐ技術」という本。 まずは実際にお手にとって、そのディスプレイの写真を見て欲しいですね! 書店に現れる巨大なお弁当! 当時話題の人気作品「進撃の巨人」の大きなディスプレイ! ツイッターのTLを模したディスプレイなどなど。 実際に書店に置いてあったら度肝を抜かれるような、素晴らしいディスプレイが掲載されています。 僕も実際にこれを見て「え!?どうやって作ったの!?」とか、「このアイデアはすごいな!」とか、「この漫画知らないけど、ここまで推されると手に取りたくなるなー」と、まずは目で楽しませて頂きました。 こういったPOPやディスプレイに関して、西原さんは本書の中で、POP&ディスプレイは「売りたい気持ち」と「買いたい気持ち」を「つなぐ技術」なのだと述べています。 なるほど、良い言葉ですね! 西原さんは書店員として「売りたい」と思った本を読み、そこからアイデアやキャッチコピーなどのヒントを探し出し、それを形にして表現する。 それを観たお客様は、書店に来ているのですから当然「何か良い本ないかなー」と思っているでしょう。 そこで、西原さんたちの作ったPOPやディスプレイを見て、「お、面白そう!」と感じてもらう。 POPやディスプレイを単なる飾りではなく、コミュニケーションあるいはメディアと捉えているあたりに、西原さんのすごさを感じる言葉でした。 さて、こちらの本の内容としてメインを占めるのは、確かな実績を誇る西原さんのPOPやディスプレイの作り方です。 とはいっても、最初のほうはごくカンタンな事から伸べられているので、小売業に携わる方なら、今までPOPを作った事がなくても、あるいはPOP作りの経験が浅くても、「ちょっとやってみようかな!」と思わせてくれるような感じなのがポイントですね! 例えば、必要な道具に関しても…… 本書Part3 POPの作り方 ルール1 道具の基本は手軽で安くて手に入れやすいものを! より 西原さんも実際に使っていて、かつ、これから始める人に、まず必要な道具として提示しているのが…… 筆ペン、マジック、段ボール、色画用紙、はさみ、カッター、のり、ボンド、マジックテープ、定規などです。 これは、小売業者なら大抵店に置いてあるか、100円ショップや文房具屋に行けば、気軽に買えるものばかりですね。 実際、僕も書店でバイトしていた頃は、これら全てがお店にありました。 これらの道具でも、工夫をすれば目を引くPOPが作れるんですねー。 また、字や絵が苦手でも気にしなくて良いと西原さんは言っています。 実は、西原さん自信も字や絵は得意ではないとし、それでどうやってPOPやディスプレイを作っているのか、本書の中で教えてくれています。 その1つの方法が分業です。 字が上手いスタッフに字を、絵が上手いスタッフに絵を書いてもらい、自分はキャッチコピーや全体のデザインを考えるほうにまわるのだそうです。 なるほど、あのものすごいディスプレイは分業によって作られていたんですね。 この辺りの具体的な担当の分け方なんかも本書に書かれているので、読むと面白いですよ。 また、筆ペンを使えば字が下手でも味のある字を書けるとして、その実例も載せています。 さらに、書く紙に一工夫を加えることによって、視覚効果がだいぶ変わることなども実例をしめしてくれていますね。 単純に画用紙にキャッチコピーを書いて、商品棚に貼り付ける。 一番カンタンなPOPの作り方ですが、ちょっとした工夫でよりお客様の目を引くようになることが分かりました。 これはちょっとPOPを作りたくなるような内容でしたね。 あとは、パソコンを活用することによって、スタッフに書いてもらった絵を保存、そして拡大・縮小・複製などを駆使して様々な形のPOPやディスプレイを作成可能ですし、僕が昔やっていたように、フォトショップやイラストレーター、あるいはエクセルを使えば誰でもPOPを作れるよ、とも西原さんは言っています。 この詳しい作り方は、実際に本書の写真で見ると、「なるほど!これは目を引く!」と合点がいくと思います。 しかも、その工夫というのは実にカンタンなテクニックなのです。 そして本書の最後には、西原さん以外の書店員さん、出版社の編集者さんや販売担当さん、取次ぎの人、図書館の人、さらに他の業界の方々のPOP&ディスプレイ論が掲載されています。 ここもちょっとデザインが凝っていて、ツイッター風に書かれていますね。 この辺りの遊び心も本書の面白いところです。 では、そのディスプレイ論を2つほど抜粋してご紹介しましょう。 僕がなるほど!と思ったお二方の意見です。 まずは、文芸社販売部の尾崎さん。 「がんこ堂さんに行くと、仕事を忘れて売り場のディスプレイに見入ってしまうんです。そして、必ず本が欲しくなってしまいます。映画のセットのようなディスプレイ。本の世界観がビシビシ伝わってきます。ネットではまず味わうことのできない感覚です。(以下略)」 なるほど! ネットショッピングが一般的になった現代において、西原さんの立体的な物質感のあるディスプレイを「ネットではまず味わうことのできない感覚」と例えるとは、さすが出版社の販売担当さんですね。 次に、コピーライターの川上徹也さん。 「今、多くの書店に一番足りないのは売り場の「熱」だ。「熱」を感じない場所には人は集まらない。天才西原店長の創りだす巨大ディスプレイは、確実に店に「熱」をうみだす。この本をきっかけに、全国に「熱」を感じる店が増えていくことに期待。」 「熱」という言葉の使い方、この概念の捉え方が、実に川上徹也さんらしいですね。 僕も本書を通して西原さんのディスプレイやPOPに対する思いを受け、自分自身の書評や、この番組と近いものを感じました。 思いを伝える手段、そこには「熱」がこもるものなのではないでしょうか? さて、ではそろそろまとめに入ります。 こちらの本、数々の受賞歴を持つ、書店員西原健太さんのPOP&ディスプレイの作り方がまとめられた一冊です。 そのノウハウは、必ず小売業、販売業の方に役立つと思います。 それと同時に、本書に込められた、西原さんのPOPやディスプレイにかける思い、ここも感じて頂くと、より深い学びや気づきにつながるのではないでしょうか? ぜひ、読んでみてください。
上一期: 空に牡丹
下一期: きのうの影踏み