主播:中村纪子
作品:東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
BGM:Rayons-魚屋ミュージシャンの手紙
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「回答は牛乳箱に」(2)
手紙を読み終え、三人で顔を見合わせた。
「何だ、これ」最初に声を発したのは翔太だった。「なんて、こんな手紙を投げ込んできたんだ」
「悩んでるからだろ」幸平がいった。「そう書いてある」
「それはわかってるよ。どうして悩み相談の手紙を、雑貨屋に放り込むんだといってるんだ。しかも、誰も住んでいないつぶれた雑貨屋に」
「そんなこと、俺に訊かれたってわかんないよ」
「幸平になんか訊いてねえよ。ただ疑問をいっただけだ。何だ、これって」
二人のやり取りを聞き流し、敦也は封筒の中を覗いた。折り畳んだ封筒が入っていて、宛名のところに、『月のウサギ』とサインペンで記してあった。
「どういうことだろうな」ようやく彼も言葉を発した。「凝った悪戯ってことでもなさそうだ。本気で相談している。しかもかなり深刻な悩みだ」
「どこかと間違えたんじゃないか」翔太がいった。「どこかにさ、悩み相談に乗ってくれる雑貨屋があって、そこと間違えたんだよ、きっと」
敦也は懐中電灯を取り、立ち上がった。「確かめてくる」
裏の勝手口から外に出て、店の前に回った。懐中電灯で、汚れた看板を照らした。
目を凝らす。ペンキが剥げ落ちてひどく読みにくいが、『雑貨』の前にある文字は、『ナミヤ』に間違いなさそうだった。
屋内に戻り、そのことを二人に話した。
……
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