《罠の中》(七) [東野圭吾]

《罠の中》(七) [東野圭吾]

2016-05-29    04'27''

主播: 大黒

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介绍:
《罠の中》(七) 原文 「景気がいいのは、兄さんのところだけよ。いいわね、お金がどんどん入って来て」 ワインを飲んで口が滑らかになったのか、妹の真紀枝が、からむような調子で孝三に言った。 「冗談言うなよ。税金は増えていく一方だし、最近は貸した金がきちんと期日までに返ってくるかどうか、不安でしかたがないといった状態なんだ。借りる時は平身低頭するくせに、返す時にはふてぶてしく開き直りやがる。とにかく始末が悪いよ」 そう言いながらも、孝三は機嫌が良さそうだった。 「お二人は社内恋愛なんですね?」 利彦たちの斜め前にいた二郎の息子の敦司が話しかけてきた。締まった顔つきのスポーツマンタイプである。現在国立大学の三年だった。 利彦たちが首肯すると、彼は感心したような顔をした。 「これだけきれいな人が、利彦さんと合うまでひとりだったってのが信じられないな」 「おい、それはいったいどういう意味だよ」 利彦は笑みを浮かべながら敦司を睨んだ。 「彼女は君と違って、大学時代は勉強していたんだ。遊んでいる余裕なんかなかったってことだよ」 「なんだ、ひどい言われようだな。最近の大学生でも少しは勉強しているんだぜ」 「当たり前だよ。来年は就職だろう?そろそろ真剣に考えないと、これからは大学卒でも厳しいっていうからな」 「まあね、だから大学院に行こうかとも思っているんだ」 「ほう」 それはすごい、と言いかけたところで、利彦の横でガシャンという音がした。信夫の息子の行雄がナイフを乱暴に投げ捨てた音だった。 「兄さん、どうしたのよ」 行雄の隣りに座っている哲子が眉を寄せて言った。 「気に入らないな」