《罠の中》(九) [東野圭吾]

《罠の中》(九) [東野圭吾]

2016-06-11    02'21''

主播: 大黒

197 7

介绍:
《罠の中》(九) 原文 「何をつまらないことで怒っているんだ」 信夫が行雄を見下ろしながら吐き捨てた。 「大学には行きたくないと言ったのはおまえ自身じゃないか。それを今になって……頭を冷やせ」 「たしかに頭を冷やしたほうがよさそうだな」 孝三がうんざりした顔で言った。「二人とも顔を洗ってきたらどうだ——玉枝さん」 「はい」 お手伝いの玉枝さんが返事した。 「二人を洗面所に案内しなさい。怪我をしているところがあれば、その手当てもしてあげるように」 「かしこまりました」 ふてくされた顔のまま立ち上がった敦司と行雄を連れて、玉枝は廊下に出て行った。さすがに彼女は長年孝三の世話をしてきただけに、この程度のハプニングではうろたえないようだった。 「すみません、乱暴者でして」 青木信夫が中山夫妻に向かって頭を下げた。いやいや、と中山二郎は掌を振った。 「敦司の言い方も悪かったのでしょう。それにあいつにも少し気の短いところがあるものですからね、まったく困ったものです」 「利彦もとんだ災難だったな」 孝三が彼の服を見て言った。シャツがぐっしょり濡れている。止めに入った時にビールをひっくりかえしたのだった。