日语朗读 芥川龙之介 馬の脚11

日语朗读 芥川龙之介 馬の脚11

2021-09-27    01'46''

主播: .🙆🚄🎦

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介绍:
けれども当人の半三郎だけは復活祝賀会へ出席した時さえ、少しも浮いた顔を見せなかった。見せなかったのも勿論、不思議ではない。彼の脚は復活以来いつの間まにか馬の脚に変っていたのである。指の代りに蹄ひづめのついた栗毛くりげの馬の脚に変っていたのである。彼はこの脚を眺めるたびに何とも言われぬ情なさけなさを感じた。万一この脚の見つかった日には会社も必ず半三郎を馘首かくしゅしてしまうのに違いない。同僚どうりょうも今後の交際は御免ごめんを蒙こうむるのにきまっている。常子も――おお、「弱きものよ汝の名は女なり」! 常子も恐らくはこの例に洩もれず、馬の脚などになった男を御亭主ごていしゅに持ってはいないであろう。――半三郎はこう考えるたびに、どうしても彼の脚だけは隠さなければならぬと決心した。和服を廃したのもそのためである。長靴をはいたのもそのためである。浴室の窓や戸じまりを厳重にしたのもそのためである。しかし彼はそれでもなお絶えず不安を感じていた。また不安を感じたのも無理ではなかったのに違いない。なぜと言えば、―― 半三郎のまず警戒したのは同僚の疑惑を避けることである。これは彼の苦心の中でも比較的楽な方ほうだったかも知れない。が、彼の日記によれば、やはりいつも多少の危険と闘たたかわなければならなかったようである。